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霊感について

今でもあれはなんだったのだろうか、とぼんやり考える。私が精神科に通い始めたのは不思議現象が起こったためであった。私はある人とのzoomでのコミュニケーション中に悪意が飛んできたような感覚に襲われ、身体がぐったりと重くなり、ひゃっくりが止まらなくなった。その時は本当に心身がおかしくなった。私は悪霊の憑依を疑った。それは精神科からすると統合失調症の陽性症状だったのだろうが、その時の私はまだ意識自体はしっかりしていた。その2年後、ハラスメントの目撃によって妄想が止まらなくなった頃とは状態が全く異なっていた。

たまたま訪れた神社でお祓いしてもらった時も、しっかり効いている感覚があったので、多分あの時は本当に何かが憑いていたのだろうと思っている。不意に異なる世界と接続してしまったのだと。そうでないと説明がつけられないからだ。私はなぜか近所に塩をまき、本当に神の啓示らしきものも聞いた。背後霊も見た。自分の意思ではなく、しなければならない、と強制されるような感覚があった。声は「助けてやるから、人々を導け」と言っていた。今となっては全く信じられない躍動感ある世界が当時は確かにあった。

今はそういう不思議さを感じることが全くなくなった。感受性全体が衰えたからかもしれない。薬による影響もあるかもしれないし、もう陽の状態は終わりになったのかもしれない、よく分からない。私は昔から不思議な世界を体感することがしばしばある子供だった。でも今はそういう感覚を感じることはない。私は今の私には霊感がなくなったのだと思っている。あれだけ傾倒したスピリチュアルにも冷めた目しか持てなくなってしまった。お祓いも一切効かなくなった。伝わってくる空気が変わった。そう感じている。

私は霊感についても、不思議な世界についても、深く掘り下げようとは思っていない。単なる病気だと言われれば、そうとしか言えないことだろう。だけど当事者としての肌感覚では、不思議な世界や力は確かにあった。私は不思議な力に押し出されるようにして、自分がそれまで内側に溜め込んでいたものやそれ以上の懐疑心、憎しみのような大きな感情を全て外に出さなければならなくなった。

私は妄想の中で最後に「お前はこれからちょっと大変になる」と暗示された。今はちょっとどころじゃなく大変な状態になっている。これまで生きてきた人生の中で最も大変な状況だ。

霊感商法などが騒がれたこともあって、霊感などの不思議な力への眼差しは冷ややかなものとなってしまったが、私はそれでもなお、体験者として、不思議な世界や力の存在を否定することはできない。でももしあれらの出来事が全て脳内の神経伝達物質ドーパミンの乱れで起こったというのなら、抗えないようなあの力は一体なんだったのか?と更に不思議に思ってしまうのである。

ただ中井久夫は「脳の中枢神経は暴走すれば原子炉以上に危うい代物です」と述べていた。私は脳の中のスイッチを押してしまったのかもしれない、脳自体がまだまだ解明しきれない不思議な代物だということは言えるだろう。この不思議な病気の謎は深まる。まとめられないこと、分からないことだらけだ。カルテで理解できることは限られている。この病気の本質は外にはなく内にあると思っている。

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